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Section 1.3 well-definedness

この節では、代数学において頻出する(退屈だが)重要な概念である、定義のwell-definednessについて解説する。
ある概念の定義のwell-definednessとは定義が数学的に矛盾したり、循環していないときに使用する言葉である。
\(\frac{a}{b}=c\)という有理数は、\(a=bc\)を満たす\(c\)が一意的に存在することを根拠に定義される。では、ゼロで割ることを考えてみてはどうか?
\begin{equation*} \frac{a}{0} \end{equation*}
この場合、\(a=0c\)となる\(c\)は存在しない。したがって、ゼロで割るという操作はwell-definedではない(定義の根拠が崩壊している)。 分子が0でも同様に、
\begin{equation*} \frac{0}{0} \end{equation*}
だから、\(0=0c\)となる\(c\)は任意の数が該当するため、well-definedではない(定義が一通りに定まらない)。
他にも重要な例として、関数\(y=f(x)\)は、\(x\)に対して\(y\)がただ一つ決まらない場合はwell-definedではなく、関数とは呼べない。 これは\(\frac{0}{0}\)の場合と同じように、定義の方法が一通りに定まらないことによる。
だから例えば、実数\(x\)に対してその平方根を返すような関数は、平方根が正負両方の値を取りうるため、well-definedではない。ここで注意されたいのは、2つの元に対して1つの値が定まるような関数はwell-definedであるということである。