Section 1.1 集合と現代数学
集合論は第6章で学ぶ圏論と並んで、現代数学の土台をなしていると言ってもよい。
現代数学で定義されるほとんどの概念は集合である。関数も集合、群も集合、自然数も集合...といったように、 大抵の概念を集合として捉えるのが現代数学の立場である。
代数学に限らずとも、解析学(微分積分)や測度論("面積"や"体積"を厳密に基礎付ける理論)、および位相空間(幾何学の土台)は集合論なしに定式化できない。 このように数学の基礎をなす集合であるが、その適用範囲の広さだけに抽象的である。高校1年生の数学Aでやるような元と包含から初めて、 一般の集合について取り扱う本書では、適切にRemarkを挿入することにより、このような抽象生の"段差"をくどくならない程度に取り除くことに務めた。
著者は圏論的な考え方を極めて重要視しているため、集合や代数構造自体と同じかそれ以上に、 その間に走る"良い関数"の存在と対象同士の関係を重視する立場をとる。
上のような理由のため、様々な概念についてなりたつ普遍的で汎用性のある性質を積極的に利用する。最初は証明に違和感を覚えるかもしれないが、 この本は数学のレクチャーノートでもある。読者の多面的な思考を促し、現代的な方法に慣れさせることを優先した。
