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Section 2.8 第2章の演習問題と略解

Exercises Exercises

1.

\(G=\{0,1\}\)とする。この集合に群構造を入れないような演算を1つ定めよ。
Answer.
\begin{equation*} 0\bullet 0=0,0\bullet 1=1\bullet 0=0, 1\bullet 1=1 \end{equation*}
とすればよい。

2.

\(\mathbb R^\times :=\mathbb R\setminus \{0\}\)を通常の乗法によって群とみなすとき、
\begin{equation*} \mathbb R_{\gt}=\{x\in \mathbb R;x\gt 0\} \end{equation*}
はその部分群であることを示せ。
Answer.
\(x,y\in \mathbb R_{\gt}\)をとる。\(xy^{-1}=\frac{x}{y}\)は必ず正であり、\(1_\mathbb R\)も正なのでこれは部分群である。

3.

\(\mathbb R\)を加法群とみなしたとき、\(\mathbb R_\gt\)\(\mathbb R\)の部分群ではないことを示せ。
Answer.
例えば\(5,1\in \mathbb R_\gt\)だが\(1-5=-4\notin \mathbb R_\gt\)である。

4.

\(g\in G\)に対して\(g^2=1\)なら\(G\)は可換であることを示せ。
Answer.
\(g,h\in G\)をとる。\((gh)(gh)=1\)であり、結合法則から\(g(hg)h=1\)である。よって\(hg=gg(hg)hh=g1h=gh\)となり、任意の\(g,h\)について\(gh=hg\)なので、\(G\)は可換群である。

5.

\(N_1,N_2\)\(G\)の正規部分群なら、\(N_1N_2\)もそうであることを示せ。
Answer.
\(n_1\in N_1, n_2\in N_2\)をとる。任意の\(g\in G\)に対して
\begin{equation*} gn_1g^{-1}\in N_1, gn_2g^{-1}\in N_2 \end{equation*}
である。よって
\begin{equation*} gn_1g^{-1}gn_2g^{-1}=gn_1n_2g^{-1} \in N_1N_2 \end{equation*}
である。これで正規性が言え、\(N_1N_2\)は明らかに\(G\)の部分群なので題意が示された。

6.

\(\mathbb R\)を加法群とみなすとき、\(a\in \mathbb R^\times\)に対して\(\mathbb R/\mathbb Z\cong \mathbb R/a\mathbb Z\)であることを示せ。
Answer.
準同型\(\mathbb R\to \mathbb R/a\mathbb Z\)を、核が\(\mathbb Z\)であるように作ればよい。\(f_a(x)=ax+a\mathbb Z\)とすると、
\begin{equation*} f_a(0)=a\mathbb Z, f_a(x)+f_a(y)=a(x+y)+a\mathbb Z=f_a(x+y) \end{equation*}
だから準同型。\(ax+a\mathbb Z\)が0となるのは\(x\in \mathbb Z\)のときに限るから\(\ker(f_a(x))=\mathbb Z\)である。さらに、\(x\in \mathbb R/a\mathbb Z\)\(x+an,(n\in \mathbb Z)\)の形をしているから、\(\frac{x}{a}\)などをとれば逆像は空ではない。よって\(f_a\)は全射であり、すなわち\(\mathrm{Im}(f_a)=\mathbb R/a\mathbb Z\)である。よって準同型定理より\(\mathbb R/\mathbb Z\cong \mathrm{Im}(f_a)=\mathbb R/a\mathbb Z\)となる。

7. 楕円曲線の構造決定.H.

有理数体\(\mathbb Q\)上の楕円曲線(elliptic curve)とは、\(a,b,c,d\in \mathbb Q\)に対して\(y^2=ax^3+bx^2+cx+d\)であり、かつ\(a\neq 0\)で、右辺の三次式が重根を持たない(判別式\(=-16(4a^3+27b^2)\neq 0\))ものの関数としてのグラフである。次の問いに答えよ。
  1. \(E\)\(\mathbb Q\)上の楕円曲線とする。\(E\)を定義する方程式の解集合
    \begin{equation*} V(E)=\{(x,y)\in \mathbb Q\times \mathbb Q;y^2=ax^3+bx^2+cx+d\} \end{equation*}
    に、無限遠点とよばれる一点\(O\neq (0,0)\)を加えた\(E(\mathbb Q):=V(E)\cup \{O\}\)に可換群の構造を与える、次の文章の空欄\(\mathrm{(i)\sim (vii)}\)を埋めよ。
    \(O\)を単位元とする。\(P=O\)なら\(P+Q=Q,\)\(Q=O\)なら\(P+Q=P\)とする。\(P,Q\neq O\)の時の和を定める。
    \(P(x_1,y_1),Q(x_2,y_2)\)とおく。\(x_1\neq x_2\)と仮定する。このとき直線\(PQ\)
    \begin{equation*} y=\dfrac{(\mathrm i)}{(\mathrm{ii})}(\mathrm{iii})+y_1 \tag{1.1} \end{equation*}
    で与えられる。この直線と楕円曲線の交点を求める。先ほどの式を\(E\)の定義式に代入して、
    \begin{equation*} qx^3+rx^2+sx+t \tag{$q,r,s,t\in \mathbb Q, q\neq 0$} \end{equation*}
    の形の式を得る。\(x_1,x_2\)はこの式の解だから、\(qx^2+rx^2+sx+t\)\((\mathrm{iv})\)\((\mathrm v)\)で割り切れ、
    \begin{equation*} qx^3+rx^2+sx+t=q(\mathrm{iv})(\mathrm v)(x-x_3) \tag{$x_3 \in \mathbb Q$} \end{equation*}
    の形の因数分解ができる。
    (1.1)で\(x=x_3\)とおいたときの\(y\)\(y_4\)とおき、\(y_3:=-y_4\)とおくとき、\((x_3,y_4)\)\(E\)\(PQ\)の交点である。このとき、
    \begin{equation*} P+Q:=(x_3,y_3) \end{equation*}
    と定める。\(x_3,y_3\)を計算すると、
    \begin{equation*} x_3=\dfrac{1}{a}\left(\dfrac{(\mathrm i)}{(\mathrm{ii})}\right)^2-(\mathrm{vi})-(x_1+x_2) \end{equation*}
    \begin{equation*} y_3=-\dfrac{(\mathrm i)}{(\mathrm{ii})}x_3+\dfrac{y_2x_1-y_1x_2}{(\mathrm{ii})} \end{equation*}
    である。
    つぎに、\(x_1=x_2\)の場合を定義する。
    \(y_1=-y_2\)の場合は\(P+Q=O\)と定める。\(y_1\neq -y_2\)の場合、\(P=Q, y_1\neq 0\)である。この場合、\(PQ\)\(E\)\(P\)における接線(ただ1つの点で\(E\)と接する直線)で、次の式で与えられる:
    \begin{equation*} y=\dfrac{3ax_1^2+2bx_1+c}{2y_1}(x-x_1)+y_1 \tag{1.2} \end{equation*}
    (1.2)を\(E\)の定義式に代入して、再び
    \begin{equation*} qx^3+rx^2+sx+t=0 \tag{$q,r,s,t\in \mathbb Q, q\neq 0$} \end{equation*}
    の形の方程式を得る。三次方程式は3つの解を持つが、(1.2)は接線だから\(E\)との交点が2つであり、\(\mathrm{(vii)}\)はこの方程式の重解である。 したがって
    \begin{equation*} qx^3+rx^2+sx+t=q(x-\mathrm{(vii)})^2(x-x_3) \tag{$x_3\in \mathbb Q$} \end{equation*}
    の形の因数分解ができる。
    (1.2)での\(x=x_3\)とした時の値を\(y_4\)、そして\(y_3:=-y_4\)とおくとき、\(P+Q:=(x_3,y_3)\)とする。
  2. \(\mathbb Q\)上の楕円曲線\(y^2=x^3-4\)\(P=(2,2)\)の場合、\(2P\)を計算せよ。
  3. この群構造は\(\mathbb F_2\)上の楕円曲線\(E(K)\)に対して、この問題で行ったのと同じ形(ワイエルシュトラスの標準形)では定義できない。その理由を述べよ。
Answer.
    1. \(\displaystyle y_2-y_1\)
    2. \(\displaystyle x_2-x_1\)
    3. \(\displaystyle x-x_1\)
    4. \(\displaystyle x-x_1\)
    5. \(\displaystyle x-x_2\)
    6. \(\displaystyle \dfrac{b}{a}\)
    7. \(\displaystyle x_1\)
  1. 接線の方程式は\(y=\dfrac{12a+2bx_1+c}{4}(x-2)+2=3x-4\)であり、定義式に代入すると
    \begin{equation*} x^3-9x^2+24x-20=0 \end{equation*}
    を得る。\((2,2)\)は重解だから、 多項式を割り算して因数分解
    \begin{equation*} (x-2)^2(x-5)=0 \end{equation*}
    を得る。\(2P\)\(x\)座標は5だから、\(3x-4\)に代入して\(11\)が出てくる。これにマイナスをつけた\((5,-11)\)が求める座標。
    微積の素養がある読者は、接線ならばと微分で求めてみるものよい。\(P\)における接線の傾きは
    \begin{equation*} 2y\dfrac{dy}{dx}=3x^2 \end{equation*}
    だから、\(\frac{dy}{dx}=\frac{3x^2}{2y}\)となり、傾きは\(3\)であるとわかり、傾きが3で\(P(2,2)\)を通る直線は\(y=3x-4\)と出てくる。後は同様である。
  2. \(\mathbb F_2\)では\(2x\)の形の元が消えるから、定義式が重根を持つため。実際、判別式\(-16(4a^3+27b^2)\)は、\(-16\)が偶数であるため、\(\mathbb F_2\cong \mathbb Z/2\mathbb Z\)上で消える。