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Section 2.1 群の定義
群とは演算の定義された集合である。これは数であってもよいし、「群の公理」をみたす集合ならなんでも群と呼んでよい。 数の概念と真反対にある、直線の束のような図形的対象に群構造が入る場合すらも存在する(Picard群)。この多くを包括する抽象性こそが、群、より一般に代数構造の強みであり、この分野の難しさでもある。
のちに学ぶ「パリティ追跡理論」では地形に対する操作が群をなす。それがある部分集合への「作用」を定めることを確認することにより、 具体的な地形の表示をいちいち気にすることなくパリティの変化の情報を取り出すことができる。(第2部参照) ほかにも、有名な「5次以上の方程式を代数的に解くことはできない」という命題も、方程式の根がなす群と、 代数的に方程式を解く過程を表現する"体"(四則演算ができる集合)との対応関係を眺めることで証明できるのだ。(第4章3節参照)
群論の諸概念は決して難しいものばかりではない。しかし、その一般性と他の概念との有機的なつながりが、群論の世界を非常に豊かなものにしている。
Definition 2.1.1. 群.
空でない集合\(G\)に演算とよばれる写像\(\bullet:G \times G \to G\)が定義されていて、以下を満たすとき、\(G\)は群(Group)であるという。\(\bullet(a,b)\)は以下\(a\bullet b\)か\(ab\)と書く。
-
単位元とよばれる元
\(e\in G\)があり、任意の
\(a\in Gに対してae=ea=a\)となる。
\(e\)はふつう
\(1_G\)と書く。
-
任意の
\(a\in G\)に対して
\(a^{-1}\in G\)という元が存在し、
\(aa^{-1}=a^{-1}a=1_G\)となる。
-
(結合法則).
すべての
\(a,b,c\in G\)に対し、
\(a(bc)=(ab)c\)が成り立つ。
集合に群構造が定義されるとき、その集合には群構造が
入る(induced)と表現する。群の任意の元
\(a,b\)について可換性
\(ab=ba\)が成り立つとき、その群は
可換群(Commutative group)という。可換群はアーベル群(Abelian group)や加法群(Additive group)などともいう。本によっては加法群を加群と呼んでいるが、これは大抵の場合では誤りである(加群は別の概念を指す)。
Definition 2.1.2. 群の位数.
\(G\)を群とする。その元の個数
\(|G|\)を群
\(G\)の
位数(Order)という。位数有限な群のことを
有限群(finite group)といい、有限でない群を
無限群という。
\(a^0:=1, a^n:=\underbrace{a\cdots a}_{n回}, a^{-n}:=(a^n)^{-1}\)と定義する。明らかに、\(n, m\in \mathbb Z(\mathbb Zは整数)\)に対して指数法則
\begin{equation*}
a^{n+m}=a^na^m, (a^n)^m=a^{nm}
\end{equation*}
が成り立つ。
Example 2.1.3.
慣れ親しんだ数体系
-
-
-
-
は、通常用いる加法\(+\)、任意の元\(x\)に対する逆元を\(-x\)とすることで明らかに群になる。これらは無限群である。
Example 2.1.4.
同様にして
\(\mathbb Q\setminus\{0\},\mathbb R\setminus\{0\},\mathbb C\setminus\{0\}\)は、通常の乗法
\(\times\)、逆元を
\(\frac{1}{x}\)とすることで群になる。これも無限群である。
Example 2.1.5. 有限群の例.
\(G={a,b}\)とする。
\(aa=a,ab=b,ba=b,bb=a\)とすると、これは明らかに群である。
\(|G|=2\)なのでこれは有限群である。
Figure 2.1.6. \(G\)の乗法表(Multiplication table)。なお、群の単位元は一意的である。実際、
\(1,e\)が単位元の性質を満たすなら、
\(1=1e=e1=e\)である。
Example 2.1.7.
\(X\)を集合とするとき、全単射
\(\sigma: X\to X\)を
置換(permutation)という。これは
\(X\)の元を取り替える操作を表している。